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【乾燥の基礎3】材料に合った乾燥機選びとは?プロが教える3つのポイントと事例紹介

はじめに

早いもので、「乾燥の基礎」コラムも第3回を迎えました。

第1回では、乾燥とはどのような現象か、そしてなぜ乾燥機が必要なのかについて解説しました。
【乾燥の基礎1】乾燥ってなに?今さら聞けないキホンを乾燥機のエキスパートがやさしく解説!

続く第2回では、乾燥に必要な加熱方法の種類について解説しました。
【乾燥の基礎2】物を乾かす方法、いくつ知ってる?代表的な加熱方法4つをやさしく解説!

ここまでの話をまとめると、目的に合った乾燥機を正しく選ぶためには、

      1.  乾燥の目的を明確にする 
      2.  乾燥させたい材料に合った加熱方法を選択する 

ことが重要でした。

そこで第3回では、具体的な材料を例に挙げながら、乾燥機選定において着目すべきポイントについて詳しく解説します。
ぜひ最後までお読みいただき、乾燥機の選び方を学んでいきましょう!

乾燥機を選ぶ際に着目すべき3つのポイント

材料特性

経済性

環境性能

被乾燥物の湿潤時の状態と適用乾燥機

湿潤粉体

溶液・スラリー

材料形態・乾燥方式別の対応乾燥機

乾燥機選定の事例紹介

まとめ

乾燥機を選ぶ際に着目すべき3つのポイント


「最適な乾燥機は何か?」を考える際、大川原製作所が大切にしている3つのポイントがあります。

      1.  1.材料特性 
      2.  2.経済性 
      3.  3.環境性能  

これらを踏まえて、どのような乾燥機が適しているかを検討し、お客様へご提案しています。
一つひとつ、順番にご説明しましょう。

1.材料特性

まず始めに把握すべきなのが、乾燥させたい材料がどのような特徴を持つか、です。
この材料特性が、乾燥機選定における最も重要なポイントと言えます。

湿潤時の材料形態、すなわち乾燥させる材料が湿っているときにどのような状態なのかを把握することが、
乾燥機選定における出発点となります。

塊状、フレーク状、粒状、粉状、液状、ケーキ状、糊状などさまざまな材料形態があり、この時点で適用できる乾燥機が絞られます。
詳しい選定の方法については、次章でご説明します。

また、材料によって乾燥特性も異なります。
親水性か疎水性か、また保持している水分が表面水か結合水かなど、乾燥特性を決定する因子はさまざまです。

 

2.経済性

新たな設備を生産現場へ導入する以上、コスト(経済性)に見合った選定を行うことも必要です。

導入時にかかるイニシャルコストはもちろんのこと、稼働時にかかるランニングコストも考慮しておくと良いでしょう。

処理方式や運転時間など、生産効率を考慮することによっても選定する装置が変わります。
ライン生産のような連続式なのか、あるいは一定の量をまとめて処理するバッチ式か、現場の生産体制に合わせた装置の選定が必要です。

加えて処理量や生産規模も、乾燥機選定時の重要なポイントです。
ラボスケール、少量多品種、大量生産など、どのような生産体制なのかによって、マッチする乾燥機も変わってきます。

また、意外と見逃されがちなのが設置スペースです。
お客様の生産現場でどれだけのスペースを確保できるのか、その情報を元に収まる装置を選定する必要があります。

もし、思うように場所が確保できない場合などは、上下に2機並べるなど特別な設計をすることもあります。

 

3.環境性能

他にも、有害物質除去装置の設置や、環境配慮を目的として省エネ装置の付加などの対策を取る場合もあります。

臭いや粉塵、有害物質などから作業者を守ることは、生産現場において必須項目の一つです。
加えて近年では、二酸化炭素(CO2)排出量低減などの省エネ性も求められています。

しかし、すべての材料に合うオールマイティな乾燥機はありません
そのため、ここまでご紹介した条件に応じて、最適な乾燥機を選定する必要があります。

 

被乾燥物の湿潤時の状態と適用乾燥機


ここからは、前の章の冒頭でもご紹介した、材料特性に応じた乾燥機の選定について、具体的な例を挙げながら詳しく説明します。

先ほども触れたように、材料特性や、材料をどう乾燥させたいかを把握することは、最適な乾燥機を選定するうえで最も重要なポイントです。

概ね、材料の特性ごとに適応する乾燥機の種類は決まっています。
代表的なものとして、①湿潤粉体と②溶液・スラリーの場合の選定方法についてご紹介します。

 

①湿潤粉体

湿潤粉体と聞くと、耳馴染みがないかもしれません。
これは「適度な水分を含んだ、小さな粒子の集まり」を意味します。

 

材料の特徴

湿潤粉体は、液体を含む湿った状態の粉体を指します。
液体は含んでいるものの、サラサラとした状態です。
ものによりますが、握ると固まる程度、湿気を含む程度をイメージすると良いでしょう。
乾燥した粉体と比べて強度が高く、衝撃や振動に強いしなやかな性質を示します。

 

乾燥機選定のポイント

湿潤粉体へ効率よく熱を与え乾燥させるためには、熱風で流動させながら乾燥させるのが一般的ですが、
少量生産であれば、伝導伝熱を用いて乾燥させるのが良いでしょう。
他にも、生産規模や生産方式などによって、湿潤粉体に適した乾燥機があります(下記の一覧表を参照)。

 

具体例

これらの乾燥機にマッチする材料の具体例は、下記のとおりです。

食品であれば穀物粉・調味料・アミノ酸・健康食品・漢方薬・医薬品など、
産業用製品であれば樹脂粉体、無機粉体、電池材料などが該当します。

 

②溶液・スラリー

スラリーとはどのようなものか、ご存知でしょうか。
こちらも粉体の仲間ですが、状態が大きく異なるため、選定すべき乾燥機の種類も変わります。

 

材料の特徴

スラリーは、水分を多量に含む粉体を指します。
先ほどの湿潤粉体と比べて、スラリーはドロドロとした泥のような状態です。

 

乾燥機選定のポイント

溶液やスラリーを乾燥させて粉体を得るためには、噴霧して表面積を大きくして、熱風乾燥させると効率がよいでしょう。
一方で、噴霧乾燥するにはある程度の生産量が必要なため、少量生産の場合は棚式乾燥機やドラム式・ディスク式乾燥機を用います。
ここからは湿潤粉体と同様に、生産規模や生産方式で適用可能な乾燥機を絞り込みます。

 

具体例


これらの乾燥機にマッチする材料の具体例は、下記のとおりです。
飲料、糖液、エキスなどの液状食品から、漢方薬、医薬品、セラミックスや金属酸化物、工場廃液などが該当します。

 

材料形態・乾燥方式別の対応乾燥機

その他、乾燥させる材料と選定する乾燥機の特長をまとめたものが、下記の表です。

湿潤時の材料形状や材料の例から、どのような方針で乾燥装置を選定すべきかを概ね見積もることができます。
選定時の参考にしていただければと思います。

また、乾燥装置を各方式に分類し、その特長を簡単にまとめたものが下記の図です。

しかし、これらの情報を参考に選定すれば必ずマッチする、というものではありません。
やはり実際の材料を用いて乾燥テストを行ったうえで、最適な装置を選定することが大切です。

 

乾燥機選定の事例紹介

最後に、実際に我々が担当させていただいた乾燥機選定の事例を一つご紹介します。
円柱状の押出造粒品を乾燥したい、というお客様のケースです。

 

お客様の要望

従来はスケールが小さかったため、棚式乾燥機を使用していました。
今後、省人化および大量生産ができる乾燥装置を導入したいとの考えから、乾燥機選定のご相談をいただきました。

 

大川原製作所の検討事項

そこで我々は、材料特性、生産性、省人化の3つのポイントから装置を選定していきました。

まずは材料特性についてです。
乾燥させたい材料は、粒径がそろっており、含水率の高くないものでした。
そこで、粉化させずにムラなく乾燥できる方法を検討しました。

続いて生産性です。
乾燥時間を短縮できることが、お客様からいただいた条件でした。
そこで、熱容量係数(*1)が大きい乾燥機の中から選ぶ方針としました。

*1 熱容量係数:装置の容積あたりの熱交換効率を示しており、乾燥装置の能力の目安となります。
 熱容量係数が大きいと、乾燥機がより多くの熱を蓄えることができるため、熱効率が向上します。
 つまり、効率よく材料を加熱できるというわけです。

最後に、省人化です。
現状は、棚式乾燥機を用いて製品の出し入れを人手で行っていました。
作業時間を削減したいというお客様のご要望をふまえ、投入/排出を自動化できる装置で絞り込むこととしました。

これら3つのポイントを考慮した結果、最終的に連続流動層乾燥機を選定いたしました。

 

まとめ

この記事では、乾燥機の選定ポイントと具体的な事例についてご説明しました。

乾燥させたい材料の特徴を把握し、生産方式や生産量などの条件を元に、最適な乾燥機を絞り込んでいくことが大切です。
必要に応じて、環境性能に優れたモデルを取り入れてみるのも良いでしょう。
今回の解説が、乾燥機選定の助けになれば幸いです。

しかし、産業用の乾燥機は種類も数も豊富です。
「言っていることは分かるけれど、結局どれを選べば良いか分からない!」
きっと、そう感じる方も多いかと思います。

そんな時は、乾燥のエキスパートである私たちにご相談ください。

大川原製作所は、お客様の要望に応えることで、食品・化学・医薬品などさまざまなメーカー様の生産を支え続けています。

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